【027】29条の2の「同一」

Q)29条の2の拒絶理由を通知されました。拒絶理由通知では、引用発明と本願発明とが同一であると記載されていますが、この「同一」とはどういう意味でしょうか?

 

A)確かに、29条の2の「同一」がどのようなものか、その意義については条文に規定がありません。この点について、審査基準(第Ⅲ部 第3章 3.2)では、ここでいう「同一」とは、❶本願の請求項に係る発明と引用発明との間に相違点がない場合、❷本願の請求項に係る発明と引用発明との間に相違点がある場合であっても、両者が実質同一である場合、のことをいうと記載されています。

したがって、引用発明と本願発明が完全同一でなかったとしても、実質同一(❷)であるといえる場合には、29条の2によって拒絶されることになります。

そこで、この「実質同一」がどのようなものなのかが気になるところですが、これについても審査基準にはちゃんと説明がなされており、「実質同一」とは、「本願の請求項に係る発明と引用発明との間の相違点が課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)である場合」をいう、と記載されています。この意味するところについて、誤解を恐れずに敢えてざっくりと申し上げると、「本願発明と引用発明とを比べると確かに違いがありますね。でも、この違いは、単なる微細(周知・慣用されていた技術を付け足ししただけ)にすぎないものであり、特筆するものではありませんね。となると、本願発明と引用発明は、実質同一ですね。」というニュアンスです。

したがって、審査官が実質同一だと考えた点について承服できないのであれば、「いやいや、審査官が指摘した違いは、微差ではありませんよ。だから、本願発明と引用発明は、実質同一ではありませんよ。」といった反論を行うことが考えられます。