【085】最後の拒絶理由通知となる場合

Q)最後の拒絶理由通知となりえる場合とはどのような場合ですか?

 

A)「最後の拒絶理由通知」とは、「最初の拒絶理由通知」に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶理由のみを通知する拒絶理由通知のことをいいます。

したがって、まず❶補正によって通知することが必要になった拒絶理由のみを通知する場合は、最後の拒絶理由通知ということになります。

補正により、発明の詳細な説明の記載が明瞭でなくなった場合又は発明の詳細

な説明の記載に新規事項が追加された場合に、その旨のみを通知する拒絶理由通知

・例)審査した請求項に新しい技術的事項を付加する補正又は審査した請求項の技術

的事項を削除若しくは限定する補正により、新たに新規性、進歩性等についての拒

絶理由を通知しなければならない場合に、その旨のみを通知する拒絶理由通知

・例)請求項を追加する補正により、新たに新規性、進歩性等についての拒絶理由を

通知しなければならない場合に、その旨のみを通知する拒絶理由通知

・例)請求項に新規事項を追加する補正又は記載不備を生じるような補正がされた場合

に、その旨のみを通知する拒絶理由通知

 

そして、❷先行技術調査の除外対象とした発明について、「最初の拒絶理由通知」に対

する応答時の補正により、新規性、進歩性等についての審査をすることが必要になった結果、通知することが必要になった拒絶理由のみを通知する場合も、最後の拒絶理由通知ということになります。

❷を最後の拒絶理由通知として扱う理由は、新規性、進歩性等について審査しなかった発明(先行技術調査の除外対象に該当するため、新規性、進歩性等についての審査をしなかったことを、理由とともに明記した場合に限る。)について補正がされた場合において、補正後の発明を審査することは、補正により追加した請求項について改めて審査をすることと実質的に同じといえるからです。

❷に該当するものとして、例えば、以下のような場合が考えられます。

・例)請求項の記載が発明の詳細な説明及び図面の記載並びに出願時の技術常識を参酌しても把握することができないほど明確でなく、新規性、進歩性等についての審査をしなかった請求項について、補正がされ、補正後の請求項について新規性、進歩性等に関する拒絶理由を発見した場合に、その旨のみを通知する拒絶理由通知

・例)請求項に新規事項が追加されていることが明らかであるために、新規性、進歩性等についての審査をせずに新規事項が追加されている旨の拒絶理由を通知した請求項について、補正がされ、補正後の請求項について新規性、進歩性等に関する拒絶理由を発見した場合に、その旨のみを通知する拒絶理由通知

 

また、「最後の拒絶理由通知」とすることができる特別な場合があります。❸新規性、進歩性等を有していない旨の拒絶理由のほかに、軽微な記載不備(第17条の2第5項第3号又は第4号の「誤記の訂正」又は「明りょうでない記載の釈明」に相当すると認められる程度のもの)が存在していたが、新規性、進歩性等に関する拒絶理由のみを通知し、記載要件に関する拒絶理由を通知しなかった結果、依然として軽微な記載不備が残っている場合です。この記載不備について通知する拒絶理由通知は、「最後の拒絶理由通知」とすることがあります。

❸に該当するものとして、例えば、以下のような場合が考えられます。

・例)通知した拒絶理由は解消されていないものの、拒絶理由を解消するために出願人がとり得る対応を審査官が示せる場合(審査官面接等)であって、その対応をとることについて出願人との間で合意が形成できる見込みがあると判断し、出願人と意思疎通を図った結果、合意が形成されたときに通知する拒絶理由通知