キーワード:特許出願

 

タイトル:「特許権と発明」

 

<記事本文>

 

Q:「そもそも特許権と発明ってどういう関係なのですか?発明とは何ですか?」

 

A:「特許権」は、権利の一種であり、一定の特許要件を満たす「発明」に対して付与される独占的排他権(特許法第68条)です。そして、特許を受けている発明を「特許発明」(特許法第2条第2項)といいます。つまり、「発明」のなかで一定の特許要件を満たしているものについて、特許権が付与される、というわけです(下図)。

今回は、「発明」とは何ぞや、という点を中心にご説明します。

 
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1.発明の定義

特許法第2条第1項には、特許法の保護対象となる「発明」の定義が定められており、発明とは「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」であると規定されています。つまり、「自然法則を利用」、「技術的思想の創作」、「高度のもの」という3つの条件を満たすものが「発明」だということです。

 

2.「自然法則を利用」について

この条件のポイントは、自然法則そのものではなく、自然法則を利用したものでなければならないという点です。この条件については、「発明」に当たらない具体例を把握することが、理解の近道でしょう。以下に、いくつか具体例を示します。

 

この条件を満たさないことにより「発明」に当たらないとされる具体例

・自然法則そのもの・・・ニュートンの法則など

・自然法則について誤った理解を前提としたもの・・・永久機関、台風の目が水素で満たされていることを前提として、そこに強力な電波を発射して台風を消滅させる方法など

・自然法則とは関係ない、純粋な人為的取り決め・・・ゲーム、暗号など

(注:ただし、コンピュータやネットワークを利用して実現されるようなビジネス関連発明、ソフトウェア関連発明については、「発明」に該当し得ます。)

 

3.「技術的思想の創作」について

この条件のポイントは、(1)習得者の能力や特性に依存する「技能」や「技量」ではなく、「技術」であるという点、(2)単なる願望などではなく「技術」という具体的手段に至っている点であるといえます。

 

(1)「技術的思想」の「技術」とは、何らかの課題を達成するための具体的手段として客観的に特定できるものだと解されています。つまり、手段として客観性がなければならないのだから、上述した「技能」や「技量」のように、習得者の特性・能力に依存するようなものではだめだ、ということです。

 

(2)そして、具体的手段というからには、一定の具体性が必要であると解されています。例えば、単なる願望だけでその具体的解決策が示されていないものや、机上の空論的な方法であり実現不可能なもの(例えば、地球全体を覆う紫外線バリアなど)は、「発明」にあたらないということになります。

 

4.「高度のもの」について

この条件のポイントは、実用新案の保護対象である「考案」と区別するという点です。つまり、「考案」は「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるという点で「発明」と共通しますが(実用新案法第2条第1項)、高度なものが「発明」であり、そうでないものが「考案」というように両者を区別しています。

 

5.まとめ

「発明」は、動産や不動産と異なり無体物ですので、その概念は把握し難く、解釈に疑義が生じやすいものです。そのため、特許権の保護対象となる「発明」とは何なのか、という議論がなされてきたという背景があります。今回は、「発明」の大概念をご説明しましたが、その他にも種々の論点が派生しています。

上述したように、「発明」にあたらないものには特許権は付与されません。よって、ご自身が発明した内容が特許法上の「発明」に当たるかどうかは、ご自身が特許権を取得できるかどうかの最初の判断基準であるともいえます。

 

※ 本項は一般的な事項についての記載であり、これをもって何らかの法的アドバイスをするものではありません。具体的な事案の対処については専門家にご相談下さい。