【037】職務発明

Q)職務発明とは、どのような発明のことをいうのですか?企業においてなされた発明のことをいうのでしょうか?

A)厳密に言うと違います。職務発明の定義は、特許法第35条第1項に規定されており、「使用者、法人、国又は地方公共団体(以下「使用者等」という。)は、従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員(以下「従業者等」という。)がその性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至った行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明」です。すなわち、
❶従業者等のした発明であること、
❷発明の性質上使用者等の業務範囲に属する発明であること、
❸発明をするに至った行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明であること、
の3つの要件を満たす発明です。❶~❸についてもう少し詳しく説明します。

❶の「従業者等のした発明」とは、使用者等と有償の雇用関係にある者がした発明だと解されます。よって、会社等の私人、法人、国又は地方公共団体から、労働の対価として報酬を受け取っている者であれば「従業者等」に該当すると解されます。
❷の「業務範囲」とは、客観的に業務の遂行と技術的関連性にある範囲だと解されます。例えば、電気製品の製造販売を業務目的としている会社において、電気製品に用いる材料の研究開発を行うことも「業務範囲」に含まれると解されます。
 なお、発明者がなした発明が、使用者等の業務範囲に含まれないものであれば、それは職務発明ではない、ということになります。
❸の「従業者等の現在又は過去の職務に属する発明」とは、現在も従業者等として使用者等の下で行っている場合の現在・過去の職務のことをいうと解されます。つまり、同一企業内において職務を変わった場合、転任前の職務に属する発明を転任後にした場合も職務発明に属することになります。例えば、計算機の製造販売を業とする企業Xにおいて、過去に計算機の研究開発職にあった従業者Aが、生産管理職に異動した後に計算機に関する発明を完成させた場合などがこれに該当します。しかし、従業者Aが会社Xを退職して別会社Yに転職し、会社X時代に得た経験に基づいて会社Yにおいて発明を完成させた場合には、会社Xとの関係においては職務発明には該当しないと解されます。