【023】新規性の「知られた」とは。

Q)新規性の「公然に知られた発明」の「知られた」とは、具体的にどの程度のことをいうのでしょうか?

 

A)特許法第29条第1項第1号の「知られた」の具体的な意義については、条文上は規定されていませんが、審査基準(審査基準第Ⅲ部 第2章 第3節 3.13)によれば、「公然知られた発明」とは、不特定の者に秘密でないものとしてその内容が知られた発明をいうと解されています。例えば、守秘義務を負う者から秘密でないものとして他の者に知られた発明は、「公然知られた発明」にあたります。このことと、発明者又は出願人の秘密にする意思の有無とは関係しませんので、注意が必要です。したがって、発明者が第三者に発明の内容を説明したとして、その第三者が特許出願をする意思がなかったとしても、特許法的には「公然知られた発明」となります。

 

例えば、学会誌等の原稿は、一般に、その原稿が受け付けられても不特定の者に知られる状態に置かれるものではありませんから、その原稿の内容が公表されるまでは、その原稿に記載された発明は、「公然知られた発明」とはなりません。「公然知られた発明」は、通常、講演、説明会等を介して知られたものであることが多いのですが、その場合、審査官は、講演、説明会等において説明された事実から公知発明の内容を認定するようです。