【120】通常実施権の対抗力

Q)通常実施権が発生した後に、専用実施権が設定された場合、先の通常実施権者は引き続き特許発明を実施することはできますか?

A)通常実施権の対抗力について、特許法第99条は、通常実施権は、その発生後にその特許権若しくは専用実施権又はその特許権についての専用実施権を取得した者に対しても、その効力を有すると規定されています。同条によれば、通常実施権は、登録その他何らの要件を備えなくても、その発生後に特許権や専用実施権の譲受人や、専用実施権の設定を受けた者に対して対抗できるということです。
 平成23年の一部改正前は、特許権の譲受人等に対して対抗するためには通常実施権の登録が必要でしたが、通常実施権の登録が手間とコスト面等の理由により実務上困難となっていることを踏まえ、通常実施権を適切に保護するため、同改正により、登録なしに通常実施権を対抗できることとしました。
 なお、この「通常実施権」には、特許権者の実施許諾による通常実施権(78条)、法定通常実施権(35条1項、79条、79条の2第1項、80条1項、81条、82条1項及び176条)及び裁定による通常実施権(83条、92条及び93条)のいずれもが該当します。