【101】利用発明

Q)利用発明とはどのようなものですか?

A)利用発明とは、先願に係る他人の特許発明等を利用する特許発明のことをいいます。利用発明については特許法第72条に規定があり、特許権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その特許発明がその特許出願の日前の出願に係る他人の特許発明、登録実用新案若しくは登録意匠若しくはこれに類似する意匠を利用するものであるとき、又はその特許権がその特許出願の日前の出願に係る他人の意匠権若しくは商標権と抵触するときは、業としてその特許発明
の実施をすることができないとされています。

 ここで注意すべきは、第72条では「利用」にあたる場合と「抵触」にあたる場合とについて規定されているという点です。
❶「利用」とは、一方の権利客体を実施すれば、他方の権利客体の全部実施となるが、その逆は成立しない関係をいうと解されています。
例)例えば、Aが合金Xの製造装置を発明して特許を受け、その後Bがその製造装置を用いた合金Yの製造方法を発明して特許を受けた場合、Bの合金Yの製造方法に係る発明は、Aの合金Xの製造装置を「利用」する関係にあるといえます。そうすると、Bは合金Yを生産するためにAの特許に係る機械を自由に使用することができるわけではなく、Bは自己の特許発明を実施するためにはAからその機械を使用することについての実施許諾を得なければならないというわけです。

❷「抵触」とは、2つの権利客体の内容が重複しており、互いに、一方を実施すれば必ず他方を全部実施することになる双方的実施関係をいうと解されています。
 抵触の具体例:
例1)意匠については、単に利用する場合のみならず、権利が相互に抵触する場合もあり得ます。例えば、自動車のタイヤに特殊な凹凸を付することがタイヤの磨耗を少なくするということで特許権の対象となり得る場合において、同じ凹凸を付することが視覚にうったえ美感をおこさせるときは意匠権の対象ともなり得ます。このような場合、特許権と意匠権との関係が、「抵触」関係になる可能性があります。
例2)特許権と商標権についても抵触する関係があり得ます。例えば、物品の形状自体に関する発明が特許権の対象となり得る場合において、その物品(商品)自体の形状を表示する立体商標が商標権の対象ともなり得ます。このような場合、後願者は先願者の許諾を得なければ実施することができないということになれば、特許権と商標権との関係が、「抵触」関係になる可能性があります。