【054】特許法第39条において先願と同日出願であった場合

Q)特許法第39条の拒絶理由を受けました。拒絶理由の原因である競合する出願(異出願人)は本願と同日出願でした。拒絶理由通知の内容や今後の審査の進め方はどのようなものになりますか?

A)競合する出願(異出願人)がいわゆる同日出願であった場合の対応については、審査基準第Ⅲ部 第4章 4.4.2等に記載されています。一般的には、以下の方針で審査が進められるでしょう。

❶全ての同日出願について審査請求がされている場合
 審査官は、各出願に対し、特許庁長官名で協議を指令します。本願に第39条第2項又は第4項以外の拒絶理由がある場合には、審査官は、その出願に対して協議を指令する際に、その拒絶理由を併せて通知します。

⇒指定期間内に協議の結果の届出があった場合において、本願が協議により定められた方の出願であるときは、審査官は、他に拒絶理由がなければ特許査定をする。本願が協議により定められた方の出願でないときは、審査官は、第39条第2項又は第4項の規定に基づく拒絶理由通知をします。

⇒指定期間内に協議の結果の届出がなかった場合には、協議が成立しなかったものとみなされます(第39条第7項)。審査官は、第39条第2項又は第4項の規定に基づく拒絶理由通知をします。ただし、協議の結果の届出以外の理由により、第39条第2項又は第4項の規定が本願に適用されないと判断した場合には、その拒絶理由は通知しません。この場合に該当する例としては、本願の特許請求の範囲についての補正により第39条第2項又は第4項が解消した場合や、意見書の主張を参酌した審査官が第39条第2項又は第4項の規定に基づく拒絶理由がないと判断した場合等が挙げられます。

❷同日出願のうち一部の出願について審査請求がされていない場合
 第39条第2項又は第4項以外の規定に基づく拒絶理由もある場合は、審査官は、その拒絶理由については、審査を進めることができます。ただし、その拒絶理由に基づく拒絶査定は、例えば、補正等により本願発明と同日出願発明とが同一ではなくなった場合のように、第39条第2項又は第4項の規定に基づく拒絶理由が解消されている場合に限ってなされます。

⇒第39条第2項又は第4項の規定に基づく拒絶理由が解消されていない場合は、審査官は、第39条第2項又は第4項以外の規定に基づく拒絶理由による拒絶査定をしません。

❸同日出願のうち少なくとも一の出願について特許又は実用新案登録されている場合
(a)この場合は、協議をすることができないとき(第39条第2項又は第4項)に該当します。審査官は、特許又は実用新案登録がなされていない出願に対し、特許庁長官名での協議の指令をせず、第39条第2項又は第4項の規定に基づく拒絶理由通知をします。
(b)審査官は、第39条第2項又は第4項の規定に基づく拒絶理由通知をする際に、特許権者又は実用新案権者にその事実を通知します。