【034】特許を受ける権利の二重譲渡事例

Q)発明者Aが、その発明についての特許を受ける権利をBに譲渡しました。しかし、発明者Aは、Cにもその特許を受ける権利を譲渡していました。両者はまだ特許出願をしていません。この場合、特許を受ける権利の帰属はどうなるのでしょうか?

A)このケースは、発明者Aが特許を受ける権利をBCに二重譲渡した事例といえます。特許出願前における特許を受ける権利の承継については、特許出願をすることによって第三者にその権利を主張することができます(特許法第34条第1項;第三者対抗要件)。特許を受ける権利は、発明をすることにより原始的に生じる権利ですから、その権利がいつ発生し、どのように変遷するのかは、第三者は認識することが難しいといえます。このような事情に鑑み、特許を受ける権利の承継については適当な公示手段もないので、特許出願をもって対抗要件としたということです。
 したがって、このケースでは、BとCのうち、先に特許出願をした方が、他方に対抗できるということになります。換言すると、BがCに先んじて権利を譲り受けていますが、それはBCの優劣に影響を与えません。更に言えば、CがBに先んじて特許出願をした場合、Bは自分がCよりも先に権利を譲り受けたという主張は認められず、BはCに劣後することになります。