【091】特許法第54条が想定する場合
Q)特許法第54条では、審査と訴訟との関係において、いずれかの手続が中止されうることが規定されていると読めます。これはどのような場合を想定しているのでしょうか?
A)まず、第54条第1項では、審決確定・訴訟手続完結するまで審査の手続が中止される場合を規定しています。
この条項が適用される事例としては、例えば、代理権の欠缺を理由として特許庁に対する代理人の行為の無効が訴訟において争われている場合や、特許を受ける権利の譲渡の無効が訴訟において争われている場合が挙げられます。
次に、同条第21項では、訴えの提起又は仮差押命令や仮処分命令の申立てがなされた場合において、査定が確定するまで訴訟手続が中止される場合を規定しています。
この条項が適用される事例としては、例えば、Aがある物質の製造方法に係る特許権を有している場合に、Bがその物質についての別の製造方法を発明したと称して特許出願をし、その査定を待たずして製造行為をしたとき、AはBの製造方法は自己の製造方法と同一であるとして侵害訴訟を提起したような場合が考えられます。この場合の争点は、Aの製造方法とBの製造方法が同一であるか否かということであり、裁判所としてはその判断の資料としてBの特許出願の査定を待つことが便宜な場合が考えられるというわけです。