【119】特許権の放棄
Q)特許権を放棄することはできますか?
A)特許法第97条では、特許権者は、専用実施権者、質権者又は第35条第1項(職務発明の通常実施権)、第77条第4項(専用実施権についての通常実施権)若しくは第78条第1項(特許権者の許諾による通常実施権)の規定による通常実施権者があるときは、これらの者の承諾を得なければ、その特許権を放棄できないとされています。
特許権は財産権ですから、その使用・収益・処分は所有者である特許権者が自由に行うことができるのが原則です。よって、本来であれば、特許権の放棄は特許権者の自由であるとも思えます。
しかし、特許権について質権、専用実施権等が設定されている場合は、特許権の放棄によって不利益を被る利害関係人が存在することになります。このような場合には、一定の利害関係人の承諾を得る必要があるということです。
放棄について承諾を要するものとしては、質権者、専用実施権者のほかには、職務発明に基づく通常実施権者、専用実施権者の許諾に基づく通常実施権者、及び特許権者の許諾に基づく通常実施権者があります。数ある通常実施権者の中でこれらの通常実施権者に限って承諾を要するとしたのは、通常実施権の発生原因の相違によるものといわれています。
なお、特許権の放棄は、第185条に規定するように、特許請求の範囲が2以上の請求項に係る特許権について、請求項ごとにすることができる。