【025】新規性の「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明」とは。
Q)新規性の「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明」の「電気通信回線を通じて公衆に利用可能」とは、具体的にどの程度のことをいうのでしょうか?
A)特許法第29条第1項第3号の「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった」の具体的な意義については、条文上は規定されていませんが、審査基準(審査基準第Ⅲ部 第2章 第3節 3.12)によれば、「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明」とは、電気通信回線を通じて不特定の者が見得るような状態に置かれたウェブページ等に掲載された発明をいうと解されています。
・上記の「回線」とは、一般に往復の通信路で構成された、双方向に通信可能な伝送路を意味します。したがって、双方向からの通信を伝送するケーブルテレビ等は「回線」に該当しますが、一方向にしか情報を送信できない放送は「回線」に該当しません。
・上記の「不特定の者が見えるような状態」とは、現実に誰かがアクセスしたという事実を必要としません。具体的には、以下の❶及び❷の両方を満たすような場合は、公衆に利用可能となった(≒不特定の者が見得る状態に置かれた)ものと判断されています。
❶インターネットにおいて、公知のウェブページ等からリンクをたどることで到達でき、検索エンジンに登録され、又はアドレス(URL)が公衆への情報伝達手段(例えば、広く一般的に知られている新聞、雑誌等)に載っていること。
❷公衆からのアクセス制限がなされていないこと。
上記の判断基準に基づけば、例えば、個人間の私信メール、特定の者(守秘義務を持った者、特定の会社の従業員等)のみがアクセス可能な情報は、公衆に利用可能となったものではないから、新規性を喪失していないといえます。
・上記の「ウェブページ等」とは、インターネット等において情報を掲載するものをいいます。そして、「インターネット等」とは、インターネット、商用データベース、メーリングリスト等の電気通信回線を通じて情報を提供するものをいいます。