【105】専用実施権と通常実施権
Q)専用実施権と通常実施権の違いは何ですか?
A)専用実施権とは、設定行為で定めた範囲内において、業としてその特許発明の実施を占有することができる権利です(第77条第2項)。
❶専用実施権は、独占排他的な実施権であり、用益物権の一種といえます。すなわち、特許権者が専用実施権を許諾した以上、専用実施権者に許諾した範囲については、特許権者であっても特許発明を実施できません。
❷専用実施権は、特許権者の設定行為によって発生します(第77条第1項、第98条第1項第2号等)。
一方、通常実施権とは、特許法の規定により又は設定行為で定めた範囲内で業として特許発明を実施できる権利です(第78条第2項)。
❶通常実施権は、非独占排他的な実施権であり、債権の一種といえます。したがって、特許権者が通常実施権を許諾したとしても、特許権者は自由に特許発明を実施できますし、さらに他者に通常実施権を許諾することも可能であるのが原則です。ただし、当事者間の契約条項に独占的に許諾することを落とし込み、独占的通常実施権として許諾することも可能です。この例外は、契約内容は当事者間の合意により自由に決めることができること(契約自由の原則)に基づくものです。
❷通常実施権には、許諾通常実施権、法定通常実施権、裁定通常実施権があります。許諾通常実施権は、特許権者の許諾による通常実施権です。当事者間の合意に基づき発生する権利です。法定通常実施権は、法定の要件を備えることで発生する通常実施権です(例えば、第35条第1項、第79条、第80条第1項、第81条、第82条第1項等)。裁定通常実施権は、特許庁長官等による通常実施権を設定すべき旨の裁定がなされ、その謄本が送達されたときに発生する通常実施権です(第83条第2項、第92条第3項、同条第4項、第93条第2項)。
なお、裁定通常実施権は、裁定の取消しも消滅原因である点で、他の実施権と異なります(第90条)。