【112】先使用権における「事業の準備」の具体的事例
Q)先使用権における「(実施の)事業の準備」の認定に関して、具体的事例があれば教えて下さい。
A)「事業の準備」の認定に関する事例については、例えば、「特許庁、『先使用権制度の概要』、平成25年」にいくつか挙げられています。以下にそれらを示します。
<事業の準備にあたるとした事案>
・試作品の完成・納入で認めた例(東京地裁平成3年3月11日判決(昭和63年(ワ)第17513号)
・受注生産製品における試作品の製造・販売で認めた例(大阪地裁平成11年10月7日判決(平成10年(ワ)第520号))
・基本設計や見積の修正があっても認めた例(東京地裁平成12年4月27日判決(平成10年(ワ)第10545号))
・金型製作の着手が即時実施の意図と、それを客観的に認識される態様、程度において表明したものと認めた例(大阪地裁平成17年7月28日判決(平成16年(ワ)第9318号))
<事業の準備にあたらないとした事案>
・改良前の試作品では準備を否定した例(大阪地裁昭和63年6月30日判決(昭和58年(ワ)第7562号))
・研究報告書に列記された成分の一つであっただけとして準備を否定した例(東京地裁平成11年11月4日判決(平成9年(ワ)第938号))
・概略図にすぎないとして準備を否定した例(東京高裁平成14年6月24日判決(平成12年(ワ)第18173号))
・医薬品の内容が未だ一義的に確定していたとはいえないとして準備を否定した例(東京地裁平成17年2月10日判決(平成15年(ワ)第19324号))
ただし、上記はいずれも地裁・高裁レベルの判決であり、各事案の事情を総合的に勘案した上で判示されたものですので、上記の行為を行っておけば必ず事業の準備にあたる/あたらない、と断定することはできませんので、あくまで参考として見ていただければと思います。